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大阪地方裁判所 昭和50年(ワ)6330号・昭51年(ワ)6653号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

1 中小企業等協同組合法は、協同組合の事業に関する法の制限の範囲内で、特定の組合の行う事業を定款の必要的記載事項として要求しているが、これは協同組合においては、営利を目的とする法人の場合とは異り、組合の活動そのものを、法の制限の範囲内で、定款所定の事業に限定することにより組合の経済的基礎を確実にし、もつて組合員の事業を助成することを目的としているからにほかならない。従つて、協同組合の権利能力も、その定款に定められた目的、すなわち組合の目的たる事業によつて制限されることはいうまでもないものの、営利を目的としないからといつて、定款所定の組合の目的たる事業の範囲を、定款に明示的に記載された事業の項目自体に限局されると解するのは相当でなく、法人としての目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為を包含するものと解すべきである。

2 そこで、右の見地から判断するのであるが、先ず共同購買が法第九条の二第一項第一号に該当し、法所定の事業の一つであることはいうまでもないところであるから、進んで、本件各決議並びに中国商品の買付が原告組合の事業目的にかなうものであるか否か検討するに、<証拠>を総合すると次の事実が認められる。

(一) 昭和四五、六年ころは、いわゆる高度成長といわれた時期に当り、商社ないしは流通業者もかなりの利益を挙げた時期ではあつたが、大手商社は系列化並びに流通機構の整備に力を入れたために、中小繊維卸問屋にとつては、これら大手商社の系列化の攻勢に対抗して、商品の安定した供給路の確保が必要であつた。また繊維の二次製品を扱う業者では人件費の影響を受け易く、附加価値の高い商品だと労働コストの吸収ができるものの、附加価値の低い商品では労働コストの吸収が難しく、これを打解する方法として附加価値の安い台湾や韓国その他の東南アジア諸国への企業の進出が盛んであつた。

昭和四七年ごろから昭和四八年にかけて綿糸が品薄となり、系列外に流れ難くなつていた。そして新聞、マスコミ等においても、将来品不足となる見通であることが盛んに報道されており、通産省や通産局も協議会を催けてスムーズな流通及び価格と需給の問題点等について協議することもなされた。

(二) このような状況下において、コストの安い商品の供給基地として中国交易が注目され始め、遅くとも昭和四五年ころからは、将来の日中関係の改善による中国交易の発展に期待して、盛んに行われるようになつた。そして昭和四七年九月二九日には日本と中国との国交が樹立され、昭和四八年一二月一二日には日中貿易協定の仮調印が行われ、その前後を通じていわゆる中国ブームが到来した。

(三) ところで、原告組合は大手商社の系列外の中小繊維卸業者の集団であり、前記の如く大手商社の系列化に対抗して安定した供給基地を確保するために、中国交易に目が向けられるようになり、経営システム研究委員会等において検討がなされた。当初は、原告組合の内部においては、中国商品は粗悪であつて国内に持ち込んでも売れないとの観測もあつたが、その後入荷した商品を見て、その観測が妥当なものでないことが明らかとなつた。そこで原告組合でも、学生作業服部会が部会の共同事業として、昭和四七年二月に住友商事株式会社から中国製作業服の仕入をした。

(四) その直後、昭和四七年二月一八日の原告組合の第七四回理事会において初めて中国交易会参加の問題が討議された。このときは、八木通商(八木商店株式会社のことか)を窓口として中国交易会に参加の機会が与えられていたので、原告組合としては、将来の実績を作ると共に今後の参考になると考え、役員を派遺することに賛成多数で決定した。そして同年三月一〇日開催された第三六回臨時総代会において右議案が提案され、その際次回の理事会において派遺役員に対する契約権限の委任について提案する予定である旨の説明がなされ、全員の了承を得た。これを受けて、昭和四七年三月一七日開催の第七五回理事会において、中国交易会参加に際し、部会として有利な商品につき契約を希望する声もあることなどを理由とし、一億円の限度において契約権限の委任を求めたところ、全員の賛成により可決決定された。右議案は同月二七日開催の第三七回臨時総代会において報告事項として報告され、全員の了承を得た。そして三名の担当理事が同年四月二八日出発して中国の広州交易会に参加し、約一億円に及ぶ買付を行つた。

(五) 第一次交易会参加に引き続き、参加人ら主張の各理事会において第二次ないし第四次の交易会参加の決議がなされたことは前記のとおりであり、右各理事会において決定された議案は、いずれもそれに接近した日時に開催された総代会において、全員一致ないし賛成多数で可決決定された。

(六) ところで、中国との貿易、とりわけ国交樹立前のそれは自由には行いえなかつた。交易会は広州において毎年春と秋に開かれていたが、それに参加するには友好商社の斡施がなければならなかつた。原告組合では友好商社である八木商店及び泉華貿易を通して貸付を行つていた。尤も交易会において現実に中国から商品を買受けるのは泉華貿易であり、それを八木商店が買受け、さらに原告組合が八木商店から買受ける仕組みであつた。ただし、買付といつても資本主義国におけるそれとは異なり、計画経済であつて余剰品はなく、理実に中国の交易会に参加し、その場で初めて原告組合の希望する商品がそもそも存するか否か、あるいは将来そういうものが作れるか否かが判明するのである。また信用上からも対外的関係からも、取引主体は原告組合でなければならなかつた。

(七) 他方、中国商品の買付の問題は、総代会を通じたり、総代の街区長を通じて説明したり、原告組合の機関紙「わかば」に載せたりして組合員に伝達された。そして組合員からの買付の要望を集めたうえ、理事会、総代会の決議に基づき、担当理事が商品の買付を行い、特別委員会を設置して商品の販売を行つた。第一次交易会の商品は昭和四七年秋に入荷したが、その時はかなりの人気があり、商品の大半が右委員会の定めた価格で広範囲の組合員に引取られ、さらに第二次、第三次へと回を重ねるごとに、商品の買付要望を出す組合員の範囲も数も広がつていつた。

(八) この間、組合員はもとよりのこと、原告組合に対し指導的立場にあつた大阪府からも、右中国商品の買付が定款に違反する行為である旨の指摘は何らなかつた。ところが昭和四八年に起つたいわゆるオイルショックによつて繊維業界が大不況に見舞われ、多量の在庫をかかえるに至つたものである。

以上の事実によれば、原告組合が主体となつて、外国との取引を開始するなどして繊維製品の安定供給基地の確保を図り、その買付商品を組合に分配することは、一般に組合員の経済的地位の向上のために期待ないしは要請されるところであり、原告組合がその期待ないし要請に答えて本件中国商品の買付をすることはその事業目的にかなつたものと解するのが相当である。

3 また定款に共同購買等の文字が存しないことは前記のとおりであるが、共同購買を禁止する趣旨で殊更「共同購買」等の文字を記載しなかつたものであることを認めるに足りる証拠はない。もとより、共同購買が事業目的の範囲内といえども、組合自体が投機的売買をなすことまで認めている趣旨でないことは、営利を目的としない協同組合にあつては当然のことである。前掲各証拠によれば、本件中国商品の買付は、将来は別として、当初は市場変化の低いもの、すなわち附加価値の少ないメリヤス、タオル、作業服、テーブルクロス等が選ばれており、また毎回買付限度額が定められており、右限度額は組合の年間売上額一〇〇〇億円に比してその0.1パーセントないし0.3パーセントに過ぎないことが認められ、いずれにしても投機的売買であるとは言えない。

4 以上の検討の結果、原告組合のなした本件中国商品の買付は、定款第一条の目的に照らし、その組合としての活動上客観的抽象的に必要な行為であつて、原告組合の目的の範囲内に属すると解するのが相当である。

(石田眞 島田清次郎 塚本伊平)

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